それはある画師が描いた屏風絵。

この屏風絵にはある逸話がある。

あなたはその画師となり、

逸話を追体験する……。

あなたは高名な画師です。

あなたの右に出る者は誰もいません。

その噂を聞きつけたのか、とある殿様が
たびたびあなたに画の依頼をしてきました。

あなたと殿様には因縁があります。

この殿様の元では、あなたの最愛の娘が働いていました。

あなたはそんな娘の身を案じ、ある画の依頼には、
褒美として娘を御前から下げて欲しい
とお願いしたこともあります。

それほど大事な娘でした。

そんなある日のこと。

殿様から地獄の様子を表した、地獄變の屏風を描け、
という命令がありました。

あなたはそれを了承します。

殿様の命は断れません。

しかし、あなたは見たものしか
画を描くことが出来ない画師でした。

そのため、地獄の様子を描くために、
弟子の一人には鎖で縛り上げ、悶え苦しむ亡者を描きました。

ある一人にはミミズクを追い回させ責め苦を与え、
怪鳥に襲われる様子を描きました。

このようにして、あなたは地獄の様子を鮮明に描きました。

そして最後の大目玉を描こうとしたときでした。

炎に包まれ空から落ちる檳榔毛の牛車の画。

それを描こうと考えていましたがなかなか描けませんでした。

「空から落ちる檳榔毛の牛車。その牛車の中には一人のあでやかな上臈が、
猛火の中に黒髪を見いだしながら悶え苦しんでいる様。
顔は煙にむせびながら、眉をひそめて、空を仰いでいる。
手は簾を引きちぎって、降りかかる火の粉を防いでいるかもしれない。

そうしてその周りには怪鳥が十羽となく、
二十羽となく、嘴を鳴らして粉々と飛びめぐっている。
 しかし、それが、その牛車の中の上臈が、私にはどうしても描けないのです。」

あなたはその画を描くために、殿様に直接お願いしようと考えました。

しかし、それだけでは駄目だと気付いていました。

直接お願いし、牛車を燃やしてしまうだけでは、最後の画を描けないと、
足りないと、あなたは本能的に感じていました。

何か犠牲が必要だと。

あなたは殿様に事情を話し、檳榔毛の牛車を実際に燃やして欲しいと頼みました。

「そうして出来るならば……」

殿様はすっと顔を暗くしたかと思うと、
あなたの頼みを快諾しました。

「では、檳榔毛の牛車を一両用意しよう。そしてそれに火をかけよう。
中には艶やかな、上臈の装いをさせて乗せて遣わそう。
炎と黒煙とに攻められて、牛車の中の女が悶え死をする……
それを描こうと思いついたのは、流石天下第一の画師じゃ」

……

あなたは床に就き、回想します……

私は殿様に、何と言えばよかったのだろう

「檳榔毛の牛車を実際に燃やして欲しいのです」

「そうして出来るならば……

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画面を開いたまま、スマホを筆のように、屏風の前で振ってください。